このエッセイのタイトルをどう付けようか。
自分の仕事に当てはめるとどうか。
考えがまとまらないうちに、このエッセイを書き始めました。
そのくらい、オススメしたいのが、
小説『キネマの神様』(原田マハ著、文春文庫)
です。
このホームページで、私の他のエッセイも読んでくださっている方は、気付かれているかもしれません。
私のエッセイには、本がよく登場します。
単に「こんな本を読みました。」という報告ではなくて、それを自分の仕事や考え方に当てはめて書くことで、「弁護士・吉森智広とはどんな人間かを知っていただく」という、このホームページの趣旨に沿うものになるように心掛けています。
その中で、『書名』(著者名、出版社名)を正確に記しているのは、私のエッセイを読んでくださった方が、その本を購入し易くするためです。
私、本が好きで、本屋さんが好きです。
出版業界を盛り上げたい、
実店舗の本屋さんが無くならないようにしたい、
という思いがあります。
私がエッセイで本を取り上げる裏の狙いが、ここにあります。
けれども、その狙いを裏にとどめておくことができない、自分の仕事に引き付けて考えることももどかしい程に感動して、オススメしたいのが、『キネマの神様』です。
これまでにも、原田マハさんの本は、
小説『楽園のカンヴァス』(新潮文庫)
対談『妄想美術館』(原田マハ・ヤマザキマリ著、SB新書)
小説『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫)
など、読んで来ました。
特に『本日は、お日柄もよく』は、たくさんの方にオススメしてきました。
けれども、ストーリーの展開に粗削りな箇所がちらほらあるようにも、思っていました。
「原田マハは美術関係の知識は圧倒的やけど、小説の完成度では、三浦しをんの方が高いかな」
そんな油断した状態の私に、『キネマの神様』はドンッ!と来ました。
原田マハさん、粗削りがどうの、完成度がどうのと偉そうに批評してごめんなさい。
読了した直後、大学時代に一緒に映画を観に行っていた友人に、久し振りにショートメールを送りました。
「元気ですか?最近、本は読んでますか?原田マハ著『キネマの神様』(文春文庫)オススメです。」
彼は、大学時代からよく本を読んでいて、様々なことに自分の意見を持っていました。
ボウリングにもよく行きました。まだスコアを手書きする時代でした。握力が強くてパワフルなストライクを時々出す彼よりも、コントロール重視でコンスタントにスペアを出す私の方がスコアは上でした。
でも、大学卒業後、ほとんど連絡を取っていませんでした。
彼は、熱い反面で、冷めたところがあります。
私から上出のようなメールが届いたら、
「また吉森は、感動してウットリした状態でメールしてきとるわ。」
と冷めた反応をするのは必至だな、と思いました。
しかし、それでもいいやと思えるくらい、私は『キネマの神様』に感動して、それを彼に伝えたかったのです。
翌日、返信がありました。
「元気ですか?今は〇〇に単身赴任しています。原田マハさんは数冊読んだけど、『キネマの神様』はまだです。読んでみます。」
20歳の頃は、お互いに角張ってトゲトゲしていましたが、30年経って、丸くなった会話を一往復することができました。