エッセイの名手

ずば抜けて良いエッセイ集を2つ読みました。
いずれも有名なものですが、あえて記します。

まず1つ

『父の詫び状』(向田邦子著・文春文庫)

著者は、ラジオ・テレビの放送作家です。
テレビドラマ「寺内貫太郎一家」は、私も幼い頃に観た記憶があります。

このエッセイ集は、ハハハと笑った後に、じわっと涙が滲んだりと、やられっ放しでした。
上手い。

面白いという点で、匹敵する現代の作家と言えば、翻訳家の岸本佐知子さんが思い浮かびます。

『ねにもつタイプ』(ちくま文庫)
『なんらかの事情』(ちくま文庫)
『ひみつのしつもん』(ちくま文庫)
『気になる部分』(白水Uブックス)
など、大喜びで読んできました。

向田邦子さんのオチがホームドラマっぽいのに比べると、岸本佐知子さんのオチはシュールなのが特徴かと思います。

面白い系で、現代の作家をもう一人挙げるなら、小説家の原田マハさん。
『フーテンのマハ』(集英社文庫)
は、旅エッセイです。明るく可愛く、笑えます。

もう1つの、ずば抜けて良いエッセイ集は、

『精選女性随筆集 幸田文』(川上弘美選・文春文庫)

明治の文豪、幸田露伴の娘です。
表現が秀逸で、随所でキラッ!キラッ!と輝くことからリズムが生まれ、スピード感があります。

言葉選びの秀逸さで、これに匹敵する現代の作家と言えば、梨木香歩さんが思い浮かびます。

『不思議な羅針盤』(新潮文庫)
『やがて満ちてくる光の』(新潮文庫)
『ここに物語が』(新潮文庫)
『水辺にて』(ちくま文庫)
『炉辺(ろへん)の風(かぜ)おと』(毎日文庫)

いずれも、凛としたものに触れて、心が洗われます。

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