歴史の見方

『会津藩始末記――敗者の明治維新』(永岡慶之助著・中公文庫)
を読みました。

何年か前から、
「歴史は、勝者によって書かれてきたものに過ぎない。
敗者の側からは、どう見えるのか。」
という興味から、色々な本を読んできました。

『武王の門(上)(下)』(北方謙三著・新潮文庫)
『楠木正成(上)(下)』(北方謙三著・中公文庫)
は、いずれも、南北朝時代、足利尊氏に敗れた者が主人公。

『琉球建国記』(矢野隆著・集英社文庫)
は、15世紀の琉球王国で、後の国王・尚泰久に敗れた阿麻和利の物語。

『壬生義士伝(上)(下)』
『輪違屋糸里(上)(下)』
『一刀斎夢録(上)(下)』(いずれも浅田次郎著・文春文庫)
は、幕末、薩長に敗れた新選組の物語です。

どれも、敗色濃厚になった時に、安易に寝返ったりせずに、義や理を貫き通す、という真摯な態度に胸を打たれます。

そういう観点から、気になっていたのが、「会津」「白虎隊」「奥羽越列藩同盟」です。

どれも、ぼやっとした知識しかなかったことから、これらを描いた時代小説はないかと、北方謙三さんや、浅田次郎さんの著作リストを眺めたこともありました。

そんな、ある日、土曜出勤のランチの後によく行く古本屋さんで、たまたま見つけたのが、『会津藩始末記――敗者の明治維新』です。

「まえがき」は、
「戊辰戦争の物語は、私たち会津に生まれた者にとって、物心つくやつかずの年頃から、繰り返し繰り返し、あきることなく語り聞かされた子守唄のようなものであった」
の1文から始まります。

そこで、カバー裏の著者紹介を読むと、「大正11年(1922年)、福島県会津に生まれる」とあります。
これは、「敗者にも光を当てて描く」どころではなく、徹底して敗者の側から歴史を見たものではないか、という期待が持てます。
そして、最後の決め手は、出版社。「チチカカコヘ」推しの私としては、中公文庫から出てるんやから、間違いない。

購入して大正解でした。
非常に面白い。

本書は、小説ではなく、歴史書です。
さまざまな文献から引用した事実を積み上げて、論じられています。
それでいて、いかに、松平容保や新選組、奥羽越列藩同盟の方が筋が通っているか、が語られます。
さらに、徳川慶喜や、長州藩を批判するくだりなどは、極めて痛快。

歴史は、年号や人の名前を暗記するだけの無味乾燥なものではなく、主義主張の込められた、味わい深いものだと実感しました。

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