夏目漱石著『坊っちゃん』(新潮文庫)
を読みました。
53才にして初めて。
今まで、夏目漱石は、高校生の時に、
・現国教科書をきっかけに『こころ』を、
・現国の先生が毎月出してくれた課題図書で『それから』を、
読んだだけで、他は手付かずでした。
何を読めばいいか分からなかった頃も、なんとなく手は伸びませんでした。
しかし、最近、さまざまな場面で、夏目漱石や『坊っちゃん』が現れるのです。
『日本語が亡びるとき』(水村美苗著、ちくま文庫)では、
「日本近代文学の奇跡」が語られていました。
『古典力』〔齋藤孝著、岩波新書(新赤版)1389〕でも、
「おまけのプラス50選」の最後に「日本近代文学」の項目で、
「一葉、露伴、紅葉、鷗外、漱石、藤村、芥川、志賀、谷崎、太宰、三島、川端、大江、中上、村上…。名を連ねるだけで気が遠くなる世界文学史上奇跡の山脈。…ノーベル賞級の作品群が母語で読める幸福を深く味わいたい。」
とありました。
『名著入門――日本近代文学50選』(平田オリザ著、朝日新書)は、単に名著を羅列するのではなく、文学史の流れの中に名著を位置付けていく、他に類を見ない秀逸な構成です。
その中で、夏目漱石については『坊っちゃん』が挙げられています。
二葉亭四迷や北村透谷の苦悩の末に生まれた日本近代文学の言文一致体が、『坊っちゃん』で完成を見たと評されています。
これは、そろそろ近代文学に手をつけようか、まずは『坊っちゃん』かな。
と思っていたところに、この夏、
・角川文庫のフェア「カドブン夏推し2023」で挙げられ、
・新潮文庫のフェア「中学生に読んでほしい30冊」で挙げられ、
もうこれは観念して読もう!と購入しました。
読んでみて、非常に驚きました。
この躍動感、疾走感。全く古さを感じさせない。
一気に読み切りました。
物事を言い切る歯切れの良さ、文語調の言葉選びも面白さがありました。
読後は、無鉄砲な江戸っ子風の感覚が伝染っていました。
これが明治時代に書かれたことの偉大さや、今も読み継がれることの理由などは、今後、文学論や夏目漱石論などをさらに学ぶつもりです。
が、まずは作品自体を純粋に楽しめました。