今年のお盆休みの3日間、大阪市立中央図書館に籠っていました。
いくつか調べものをしながら、疲れたら、文芸コーナーでウロウロ、漫画コーナーでダラダラ、また自分の机に戻って調べもの、と至福の時を過ごしました。
調べものは、最近、主題として掲げている
「戦前のものは、全て悪か?」
という問いに関わるものです。
敗戦によって、軍国主義、覇権主義、帝国主義を捨てたはいいが、日本の美風までも捨ててしまったのではないか。
という観点から、少し考え事をしています。
その具体的な内容の一つに、「日本精神叢書」があります。
大阪駅前第3ビルの古書店でめぐり逢った本については、以前のエッセイで述べました。
その本を手にしてから、
「文部省教学局」や「日本精神叢書」について、まとまった時間のあるときに調べてみたいな~
と思っていました。
気分は、出久根達郎さんです。
それが、この夏に叶いました。
大阪市立中央図書館で、「文部省教学局」で検索したところ、適した本に行き当たりました。
『新版 昭和教育史―天皇制と教育の史的展開―』(久保義三著、東信堂、2006年)
その第八章に、「文部省教学局のファッショ的役割と機能」と題された記述を見付けました。
同書の451頁以下から引用して、教学局の役割をその前身から順を追って記しますよ(丸谷才一さん風)。
・昭和3年 専門学務局に学生課が設置され、学生生徒の思想動向の調査を主要任務としました。
・昭和4年 学生課を廃止。学生部がおかれ、同じように学生生徒の思想の調査および指導に関する事務を行うものとされました。
・昭和9年 学生部廃止。思想局設置。学校および社会教育団体における思想上の指導、監督および調査に関すること、国民精神文化研究所に関すること等を掌るものとされました。
・そして、昭和12年 思想局廃止。教学局設置。「国体の本義」に基づく教学の刷新振興に関する事務を行うものとされました。
ここでは、学校および社会教育の範囲を超えて学問・文化の領域に対して、いいかえれば広く国民文化および国民思想全体に対する在り方を問う機関となっていきました。
この教学局が行った「指導資料ノ編纂」の一つが、「日本精神叢書」です。
昭和9年度以来、旧思想局より継続発行されてきました。
第28輯までが、思想局発行で、それ以降は教学局発行。
各冊2500部が印刷配布されました。
これらは、一般にも広く普及させる目的で、内閣印刷局から複製発売されるだけでなく、日本文化協会にもその機関紙『日本文化』に選択して転載させることにしていました。
『新版 昭和教育史―天皇制と教育の史的展開―』の著者は、教学局について、
「こうして、学生課・学生部・思想局そして教学局とその部局名を変え、機構を拡大してきたが、一貫して思想・学問の自由を抑圧し、国体史観に基づく思想を国民に対して強制しようとした。」
とまとめています。
たしかに、資源が不足している時代に、民間の出版は規制しつつ、特定の思想を国家が選択して推奨する、ということだけを取っても、表現の自由の重大な侵害ですね。
けれども、そのことと、選択された思想の良し悪しは、別の問題ではないか。
全部がアカンって言うてる人は、叢書60冊を全部、読んだんでしょうか。
次回は、まず読んでみた1冊の内容を、ご紹介します。