郷土愛

佐藤春夫著『南方熊楠 近代神仙譚』(河出文庫)

を読みました。

私、出身地を尋ねられたら、
「生まれも育ちも大阪です。」
と答えるようにしています。
(「あんた、和歌山やろ!」
というツッコミを入れてくれる友人が一緒の時だけですが。)

高校受験のころから、大阪に憧れていました。

高校は、和歌山市から大阪府高石市に通いました。
3年間かけて、和歌山弁を封印することに成功しました。

大学入学以来、大阪に住んでいます。
大阪弁護士会に登録して、大阪弁で仕事ができることに、喜びを感じています。

大阪で生活することの嬉しさで、和歌山のことはすっかり頭から離れています。
ネタは抜きにして、本当に自分は大阪の人間のような気になっています。

しかし、
スーパーで、みかんを買うときは、愛媛みかんではなく、有田みかんを選びます。
梅干しは南高梅でなければなりません。
パンダと言えば上野よりも白浜です。

封印しているつもりなのに、ひょっこり和歌山が顔を出します。

そんな私が、本屋さんで背表紙に吸い寄せられたのが、冒頭の本です。
南方熊楠は、郷土の英雄です。

これに対し、佐藤春夫は、太宰治絡みで名前を知っているだけでした。
なんで佐藤春夫が南方熊楠なんやろ?
と思いながら、手に取って、作者紹介欄を見て驚きました。
佐藤春夫は和歌山県出身でした。知りませんでした。

和歌山県出身の文豪が、郷土の英雄である南方熊楠を「先生」と読んで、賛美する内容でした。

これは、私が読むべき本だ!

隠そうとしていた郷土愛が、溢れてきました。
格調高い文章で、ともすれば変人扱いされてきた和歌山の英雄が賛えられています。
いろんな意味で、満たされました。

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