『台所のおと』(幸田文著、講談社文庫)
を読みました。
いえ、正確に言えば、「読めました」。
私は、令和2年ころ、この小説を読もうとして挫折していました。
手に取ったのは、『THE BOOKS』(ミシマ社)がきっかけでした。
書店員さんの推薦文に惹かれて、冒頭部分を読んでみたのですが、その時は読み進めることができませんでした。
私の『THE BOOKS』の該当頁には、
「ん~、静けさが伝わるのはスゴいけど、ワクワクせんね」
と記されています。
その後、幸田文さんの随筆を、2冊読みました。
『精選女性随筆集 幸田文』(川上弘美選、文春文庫)
『雀の手帖』(新潮文庫)
凛とした文体、研ぎ澄まされた言葉選びに、感銘を受けました。
父・幸田露伴に厳しく躾けられた幸田文さんの人となりも垣間見ることができました。
小説もきっと良いはずだ。
今こそ、宿題のように積み残している『台所のおと』に挑戦しよう。
改めて読んで、唸るほどの感銘を受けました。
文体、言葉選びは、もちろんのこと、作中人物の感性が洗練されています。
そして、短編小説の終わり方が、「おおーっ」と声が出るほど秀逸です。
5年前に良いと思えなかったものを、最上級に良いと思う。
「ボクも成長したな」と思ったのですが、よく考えれば、これ、随筆との相乗効果でしょう。
同じように、随筆との相乗効果を感じるのが、浅田次郎さん。
いっとき、浅田次郎さんの小説から離れていたのですが、エッセイ
『つばさよつばさ』(小学館文庫→集英社文庫)
『アイム・ファイン!』(小学館文庫→集英社文庫)
『パリわずらい 江戸わずらい』(小学館文庫→集英社文庫)
『竜宮城と七夕さま』(小学館文庫)
『見果てぬ花』(小学館文庫)
を読んで、惚れ直しました。
エッセイを読む傍ら、
小説「蒼穹の昴シリーズ」の
2作目『珍妃の井戸』(文春文庫)
3作目『中原の虹』(文春文庫)
を読みました。
やっぱり良い!
ちょうどその小説を書いている時期のエッセイも読めたりして、相乗効果を強く感じました。
これからも、エッセイと小説を、バランス良く読んで行こうと思います。