『お言葉ですが…』(高島俊男著、文春文庫【出版社品切れ】)
を、古書店で買って読みました。
この本は、日頃なにげなく使っている言葉を、著者が、中国文学の蘊蓄を背に、あるときはバッサリ、あるときはチクリと分析したエッセイ集です。
ある言葉使いが何故おかしいのか、文法などから明快に解きほぐしてくれます。
しかし、この本を読んでから、私、非常に悩んでいます。
例えば、打合せの後、依頼者がこう言ってくださることがあります。
「絡まっていた問題が解きほぐされて、とてもスッキリしました。」
これに対して、私は、
「それは良かったです。」
と返します。
しかし、この私の言葉は、日本語として間違っているらしいのです。
単に、「それは良かった。」が正解。
もし、どうしても丁寧に言いたいのなら、
「それは良うございました。」
が正しい。
これで思い起こすのが、百貨店のエスカレーターのアナウンスです。
「手すりをお持ちになり、黄色い線の内側にお立ちください。」
の前に付いている言葉をよく聞いてみると、
「あぶないですので」
ではなく、
「あぶのうございますので」
と言っています。正しい日本語です。
でも、このアナウンスは、大人の女性の落ち着いた声で言うから似あうのです。
私が、「それは良うございました。」と言ったら、変でしょ。
私のキャラとしては、「それは良かったです。」が合っているのですが、それは日本語として間違えていて、小学生の夏休みの日記みたいになってしまう。
「今日は、川で遊んで、楽しかったです。」
「みんなでスイカを食べて、おいしかったです。」
私は、正しい日本語を使いたい。
自分の言葉使いの間違いに気付いて、「良かったです」「楽しかったです」「美味しかったです」が封じられてからは、すべての語尾が気になり始めて、喋る時に、いちいち詰まってしまいます。
日本語の正しさを優先するか。
話の流暢さを重視するか。
とても難しいです。
難しゅうございます。